脳血管障害患者における麻痺側肩関節疼痛(Painful Hemiplegic Shoulder;以下,PHS)は出現率の高い二次障害の一つであり1),リハビリテーション施行の妨げとなって機能回復,日常生活動作(activity of daily living;以下,ADL),生活の質や入院期間に影響を及ぼすことが知られています2,3,4).PHSの発生頻度は報告により差はあるが,5%から高いものでは80%以上に認められるとしています5-8).発生原因としては筋トーヌスが低下した弛緩期に肩板の支持機構が働かないことで肩関節亜脱臼(以下,亜脱臼)が生じ,肩関節をまたぐ上腕筋腱や肩板筋腱の付着部に大きな牽引力が働くことやインピンジメントにより組織が損傷し,炎症を惹起して痛みが発生します9-11).ただ,実際の臨床では亜脱臼が生じていなくても痛みを訴える患者は少なくありません.そのため亜脱臼がPHSの発生要因であるかどうかは異論があり,いまだ明らかにされていないのです8).また,PHSは麻痺度に関連性があることが古くから指摘されているが12),麻痺の回復とともにPHSも改善するかどうかは不明であり,PHSと麻痺度の関連性にも疑問が残ります.したがって,縦断的な観察によりPHSの予後を検討することも重要と思われるます.しかしながら,その点に着目した報告は多くありません.臨床においてPHSが問題となるのは回復期病棟でリハビリテーションを行う時期でありますが,本邦の回復期病棟におけるPHSに関する調査は見あたりません.そこで,回復期病棟でリハビリテーションを行う脳血管障害片麻痺患者におけるPHSの発生状況と麻痺,運動機能を後方視的に調査し,PHSの発生要因や運動機能回復とPHSの持続・改善との関連性について調査しています.
森 健次郎,他:回復期リハビリテーション病棟入院中の脳血管障害患者における麻痺側肩関節疼痛の関連因子についての観察研究.脳卒中,2019(印刷中)より引用
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